ちるえさんの自由帳

タイ・チェンライのNGOで1年間ボランティアをしたトビタテ生の日々と頭の中とお絵かき

lahu funny man から見る山地民とタイ人〜偏見や差別ってなんなのさ〜

こんにちは。間があいてしまいましたが前回の記事の続きです。↓↓

トッケイと暮らす〜タイ人にとっての普通って何だ?〜 - ちるえさんの自由帳

(長くなってしまったので、まずは小見出しだけ追うと記事の概略が掴めます)

 

 

本題に入る前にこの方の紹介をまずさせてください

  • スーパーラフ族・ヤカーさん

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みなさんご存知ヤカーさんです。
ラフ族のガイドさん。ミラーのスタッフではありませんが、ミラーのエコツアー①2泊3日のエコツアーに参加してきた - ちるえさんの自由帳に参加すると大体ガイドさんはヤカーさんです。(トレッキング等する場合は必ずガイドさんを付けなければなりません。付けないと罰金を取られたり逮捕されます)

 

ヤカーさんはラフ語、タイ語はもちろんのこと、アカ語、英語、日本語も堪能、知識豊富で器用、更には人懐こい性格と日本のギャグや歌もよく知っていて話のネタに尽きることはなく、誰もが認めるスーパーラフ族です。某日本のアイドルを村に受け入れ、日本のテレビに出演したこともあります。

 

山地に入るためのガイドさんは、それこそたくさんいるのですが(チェンライの街には観光客に向けたトレッキングとホームステイを提供しているオフィスを幾つか目にします)
あんまり構ってくれなかったり適当だったりと残念なガイドさんもいる中、ヤカーさんはサービス精神旺盛で間違いありません。

私もかつてヤカーさんのガイドでエコツアーに参加しました

chi-mogu.hatenablog.com

ホームステイに参加して帰ってくると誰もが口を揃えて「ヤカーさんすごい」と言うものです。ミラーあるあるです←

 

  • 実は映画スターでもあった!

そんなわけで人気者のヤカーさん。ヤカーさんが映画に出たことがあるってご存知ですか?

その映画がこちら↓

youtu.be

 

短編映画『Lahu funny man』です。
ヤカーさんによると「たまたまガイドしたアメリカ人の映画監督さんに声をかけられた」ことがきっかけで、この映画が作られたそうです。

言語はタイ語ですが、下に英語字幕がついています。簡単に内容を説明すると、

テレビでコメディアンが山岳民族を笑い者にしているのを見て許せん!となった若者(ヤカーさん)が、コメディアンに直談判しに行く

するとコメディアン「バカにされたくないなら、お前がコメディアンやって有名になればいいじゃないか」

ヤカーさん「なるほど!」

コメディアンになったヤカーさん、たちまち人気者になる

ヤカーさん「とりあえず有名になったので、実家に帰ります。家と家族が恋しい〜」

なんだか不思議なオチですね←

 

  • 「なんでヤカーさんは怒った?」

この作品を観て、疑問に思ったことがありました。

「冒頭にある山岳民族が笑い者にされるっていうコメディ・・・本当にあるのか?そしてそれってどんなものなのか?」

映像の中には登場していません。よーし、タイ人に聞いてみよう〜

 

友人A「うーん聞いたことないな」

友人B「あるけど、本気で笑っているんじゃなくてコメディとして笑っているんだよ」

 

ん?結局あるの?ないの?

よくわからないのでさくらさんに聞いてみた

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さくらさん「あるある〜なんか方言丸出しな感じ」

わたし「あーU字工事みたいなかんじですかね」

さくらさん「だれそれ」←在タイ10年以上

 

わたし「山岳民族の人が話す言葉ってそんなに訛ってるんですか?(注:山岳民族は独自の言語を持っているが、近年低地への移住が進み、30代以前の世代はタイ語も話せる人が多い)」

さくらさん「うーん、やっぱり違うよね。北タイ語だし。」

わたし「私は北タイ語は語尾がジャーオなことぐらいしか聞き取れません。笑  」

 

わたし「北タイ出身の友人が、バンコクで面接を受けた時に北タイ語が出ないように神経使って疲れたって言ってました。北タイ語ってフォーマルな場では使えないんですか?」

さくらさん「いや、そんなことないよ。使う人は使う。日本も一緒でしょう?方言を気にする人は気にするし、個性だと思う人は気にしないだろうし」

 

なるほど。思えば私にもそんな経験がある。

 

  • 周りは笑ってるけど笑えないこと

私は埼玉県出身で、ある歌が流行った時には「ダサイタマ」と他県の人にバカにされたりもしました。でも特に気にしなかったなぁ。

それは周りの人が本気でバカにしてるわけではないだろうと思っていたのもあります。

 

まぁ、本気じゃないにしても、聞いていていい気分にはならないですけどね。

 

他にも、昔群馬県出身の友人が、群馬のことを飲み会の席でバカにされて静かに本気で怒っていたのを思い出しました。でもそういう時怒ってるのって伝わらないんですよね。「なに本気にしちゃってんの」みたいな雰囲気になる。余計イライラする。

 

話をタイに戻します

 

山地民の人たちは、自分たちが扱われているコメディーをどんな風に捉えているのか?

疑問に思ったので、映画に出たヤカーさん本人に聞いてみました

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この日私とヤカーさんは会うのが最終日かもしれないと長い立ち話をしてしまいました。私には珍しいセルフィー←

 

わたし「ヤカーさん、lahu funny manでコメディアンにヤカーさんは怒ってましたけれども、そういうコメディアンは本当にいるんですか?」

ヤカーさん「いるいる。映画に登場したコメディアンは実在するしね。友達になった」

わたし「(す、すごい・・・)ヤカーさんは山地民がコメディーになってるのはどう思いますか?」

ヤカーさん「うーん私は気にしないけど、気にする人もいるよね。山地民はタイ語がちょっと変だし」

わたし「え、変なんですか?」

ヤカーさん「変だよ。どんなに英語が上手な日本人でも、ネイティブの英語と違うでしょ?それと同じ」

 

これは知らなかった。

 

ヤカーさん「でも、山地民だけじゃないよ。ジェーン(元スタッフ・東北部出身→東北部訛り)もそうだし」

 

あ、なるほど。標準語と違うって意味での変ってことか。

日本にもよくある話じゃないか。

 

 ヤカーさん「あの映画つくったときねー街歩いてたら色んな人に‘’映画に出てた人だ!”って声かけられたよ〜今は山地民の映画もたくさん出てるから、もうないけどね笑笑」

 

  •  誰にとってのfunny?

 

山地民がコメディーの対象になっているのは、私たちからすると少し分かりにくいことでした。ひいてはそれは、山地民について「偏見や差別がある」という事実があることは知っていても、具体的にそれが何なのかわかりにくいということでもありました。

 

長いわたしのブログにお付き合いくださったみなさまには、それが何なのか、そして日本にもある話なんだということが、伝わったのではないかと思います(そうであってほしい←)

 

「偏見や差別」というのは簡単に言葉にされますが、実は認識されるのもするのも、とっても難しいものなんじゃないかと、ミラー生活で強く感じるようになりました。

その難しさは、「自分は関わってない」「関係ない」という誤解から生まれているように思います。

 

先ほどの話、飲み会の席で群馬出身の友人が嘲笑されていて、その時私も一緒になって笑っていました。

そして後で友人が怒っていたと聞いて、気づいたのです。

群馬のことを心からバカにしているわけではないし、そのことを発言したわけではない。でも他のみんなと一緒になって笑って、私は群馬をバカにする流れに加担していました。

 

こういうことはよくあることなんだと思います。私には群馬の話だけでなく心当たりがたくさんあります、みなさんはどうでしょうか?

 

  • funnyなことのfunnyじゃない事実

長くなってしまったのでそろそろまとめます。

このブログで、ミラー生活のまとめとして、私が1番言いたいのは「偏見や差別をなくしていこう」ということでは、実はありません。

もちろん、なくしていこうと思う姿勢は大事ですが、「偏見や差別をなくすこと」自体で「偏見や差別をなくして実現したい世界」が成し得るとは、私は思えません。

 

 裏を返せば、偏見差別をなくして実現したい世界をつくっていくには、偏見差別をなくすだけが実現手段ではない、他にも手段がある、ということです。

 

その手段に、私たちにこそできることがあると思っています。

それは、「自分はどんなにしたくなくても偏見差別をしてしまう」と認めること、知ろうとすることです。

 

パーフェクトな人は存在しません。誰かにとっての良いことは悪いこと、嬉しいことは悲しいこと、何でも裏と表があります。

差別をしないことが差別をすることになるというジレンマだって、世の中に溢れています。

自分の享受している物事だけではない別の捉え方がある、それに気付くこと。

シンプルだけど難しい、できるかどうかは置いておいて、やってみようかと思うことはできるんじゃないかな。

 

  • ただのfunnyで人が死ぬ

「 偏見や差別は人を殺します」

これは私のゼミの先生が生活保護の授業の際に言っていたことです。

昨今、生活保護の受給に関して時折ニュースが流れますね、不正受給がなんとかみたいに

そのニュースを見て、生活保護を受給したくなるでしょうか。本当に生活がギリギリで、追い詰められている人であったとしても、ニュースと世間の風当たりを目の当たりにして申請を止めようと言う人がいても不思議ではありません

 

  • funnyなのは自業自得?

もし、申請をせずに、飢えて亡くなってしまったらその人は自業自得でしょうか

 

私はそう思いません。自業自得のラベリングで片付けられてしまっていることは世の中にたくさんあるように思います。

 

私は、それらに気付くきっかけづくりをしたい、だからミラーを切り口に広報をやろう。やらないよりはやってみよう、何かが変わるかもしれないから。

 

「山岳民族」と聞いて、みなさんどんなイメージを持ちますか?

これはオリエンテーションの際に必ず投げかける質問なのですが、色々な言葉が飛だしてとても面白いです。

 

山岳民族に関しては今でも色々なイシューが存在しています。グローバリゼーションが進んで「問題は徐々に減っている」と言われてる今こそ、問題は見えづらくなって厄介なことになっていると感じます

 

Funny だと笑われている山地民の人々は自業自得でしょうか

funnyなものとして笑っている人たちは、本当に偏見や差別をしていないと言えるのでしょうか

 

  • 「普通」から離れて気付くこと

持っていたイメージは、実際にホームステイやミラーの活動を経て、どう変わるのでしょう。もしかして、変わらない?
私個人は、山地民のあらゆることについて覚知するきっかけづくり、すなわち広報活動を、この1年間ミラーでやってきました。

 

山地民は日本人に馴染みの浅い人々かもしれません。でも、私たちは彼らから学ぶべきことがたくさんあるように思います。

 

ミラーでの経験が、あわよくば私の書いたものが、そう思えるきっかけや背中を押せるものとなればいいなぁと、願ってやみません

 

長くなりましたがここまで読んでいただきありがとうございました